イタリア・オルコ渓谷クライミングツアー報告

6月頭~7月頭にかけての1ヶ月間、イタリア・オルコ渓谷(orco valley イタリア語だとvalle orco)に行ってきました。
オルコ渓谷はイタリア北西部にあります。ミラノから車で2時間半くらい。

グランパラディーゾ国立公園の南側で、渓谷沿いに岩場が点在しています。
エリアによって公園内だったり公園外だったりします。

私はヨーロッパは10年前にフランス乗り換えの飛行機に乗った時に、シャルルドゴール空港からオルリー空港へ30分車で移動したのが唯一のヨーロッパ上陸で、今回がほぼ初めてのヨーロッパでした。
オルコ渓谷と言えばグリーンスピット(Greenspit)というルーフクラックが有名です。2006年に発売されたDVD・First AscentにDidier BerthodがGreenspitを初登する映像が入っていて、それが格好良く、ずっと気になっていていつか登ってみたいと思っていました。
今年のクライミングツアーは久しぶりに妻と行きました。
どこに行こうかと考えていた時に妻がヨーロッパに行ってみたいと言い、それならGreenspitだとすぐに思い、オルコ渓谷に行くことにました。

オルコ渓谷はクラッククライミングとマルチピッチクライミングが中心で、ボルダリングやスポートルートもあるというなんでもできる場所で、イタリアのリトルヨセミテと呼ばれているそうです。
岩質は花崗岩に似た片麻岩(gneiss)ですが、エリアによって少し感じが違っています。

クライミングシーズンは6月や10月が良いと聞いていました。実際に行ってみると今回は雨が非常に多かったです。今年が異常気象で本来はこんなに降らないそうですが、ツアー期間の半分くらいは雨が降ったかなという印象です。また、途中でアフリカからの高気圧が来て、最高気温30℃越え。これも珍しいことのようですが、岩場は南向きの所がほとんどでかなり暑く、岩場にいるだけで辛いなと思う時もありました。
ツアーを通して寒いと思うことは無かったので、もう少し寒い時期でも良かったなと思いますが、これはその年によっても変わってくると思います。

出発の時は良い天気

飛行機はシンガポール航空でした。チケット購入時点では中国での乗り換え時間が長すぎたエアチャイナを除くと一番安かったです。

成田-シンガポール乗り換え-ミラノだったのですが、行きはシンガポールの乗り換えが長く、6時間くらい待ちます。
長くて時間をつぶすのもつらいなと思っていたら、6月から乗り継ぎ客向けの無料シンガポールツアーが再開されたとの事(コロナでずっと中断していたそう)。
ちょうど良いので少し観光できました。

観光の定番マーライオン

ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ

そして順調にミラノに到着。レンタカーを借りてオルコ渓谷へ向かいました。
イタリアは車は基本マニュアルだそうで、レンタカーもマニュアルです。
借りた車は小さめでしたが、狭い道が多かったのでちょうど良かったです。

ガソリンはだいたい1リットル1.81~1.88ユーロ。今回の旅行中は1ユーロ150(出国時)~157(帰国時)で、換金手数料で+3円くらい。
リッター300円弱と日本よりも大分高かったです。
他の物も基本的に日本より高かったです。

レンタカー プジョー208

オルコ渓谷ではクライミングはかなり認められているようです。クライミングエリアは場所によっては観光地なのですが、岩場の案内板があったり、湖の遊歩道沿いのエリアでは岩場の横に看板があってルートが紹介されていたりしていました。

サージェントにある岩場の案内板

湖近くのエリア

岩場横の看板

一番の目的だったGreenspit 8bはトライ4日目にRedpointすることが出来ました。

Greenspitへのアプローチ

Greenspit

Greenspitを下から見るとこんな感じ。傾斜が強いです。

景色が良く、落ち着く場所でした

前半はハンド中心ですが、クラックはシンハンド~ワイドハンドまでサイズが変化していて悪いサイズのところはジャミングの効きが悪く消耗します。
足を先行させる部分もあり、そこではいったん足ブラになるので腹筋や腕への負担がかかります。そしてルーフの最後に核心が待っていて、この傾斜でのシンハンドからのフィンガー。
ここが難しく、通してくると余計にここが厳しく感じました。

出だしはカムを3つ決めてクライムダウンし、しばらく休んでから登りました。
ちょうど良い所に誰かが置いたカメラ置き用の石があったので動画を撮ったのですが、レッドポイントの時はカメラを置く向きが少し左の方になってしまい、出だしがちょっと切れてしまいました。

他に登った主なルート

Fissure du panetton 6c+

車から降りてすぐの所にある良いルート。出だしのフィンガーは結構悪い

Incastromania 6a

とても綺麗なクラック。ハンド中心。トポにはルートの長さが25mで70mロープが必要と謎な事が書いてあるが、登ってみたら60mロープで十分足りた。ルートの高さは25m弱くらい(蛇行するのでカムを回収しないで降りたら50mロープだと足りるか??)。

Legoland1P目 6b

Legolandの1ピッチ目は6b(5.10b/cくらい)だが、傾斜が緩いスラブ状に走った細いクラックでプロテクションも取りずらく、結構登りにくく感じた。

Legoland 2P目 7b

イタリアのセパレートリアリティと呼ばれているそうだが、だいぶ小さく短くかった。

Non So Chi Mi Tenga 7a+

被ったワイドクラック。レイバックかワイド登りか迷うスタート。ルーフを越えるところも悪い。

Sitting Bull 7a

ジグザク折れ曲がったクラックが綺麗で特徴的。核心は短い。

Fessura Kosterlitz 6b

ボルダーで登る人も多いようで、マットが常設されている。写真で見えるよりもかなり高いのでリードでも良いと思う。シンハンドからハンドにだんだん広がっていく。

牛がいっぱい

この辺りは牛がいっぱいで、あちこちでカウベルの音が鳴っていました

養蜂も盛ん

養蜂も盛んなようです。養蜂箱がカラフルで、おしゃれです

ibex

グランパラディーゾ国立公園のシンボルにもなっているアイベックス。
一時は絶滅寸前まで減ってしまい、保護されている。

チェレゾーレ・レアーレからさらに奥に行ったビューポイント

セッル湖とアニュエル湖の二つの湖が見えます。人気の場所でした。

Rifugio Pontese

1時間弱のハイキングで行ける山小屋。山と湖が綺麗でした。

Levanna Orientale

メインエリアのSergentの駐車場から見えるLevanna Orientale 3555m。いつも綺麗でした。

Locanaの高級スーパー

この辺りで一番大きな町のLocana。普段は普通のスーパーに行ってましたが、この高級スーパーでもたまに総菜とかデザートを買いました。どれも美味しかったです。

Locana

街はこんな感じ。

Locana

今回借りた宿

Sergentの近くや他にもキャンプ場はあちこちありましたが結構高いです。
宿でもほとんど値段が変わらなかったのでAirBnBで一軒家を借りました。かなり居心地よかったです。オーナーの人がとても親切で助かりました。

近所の犬。良く吠える。

おまけ

Sergent近くのチーズ屋さん

どれも美味しかった!

ピザはもちろん美味しい

到着してすぐに体調を崩してしまい、最初は無理して登っていたもののダウンし、しばらく寝たきりで登る事が出来ませんでした。
後から思えば出発前から少し疲労がたまっていた気がします。
ただの風邪だと思って日本から持って行った風邪薬などを飲んでいましたが、どんどん酷くなってしまい結局病院へ。
病院で注射や点滴、飲み薬をもらって無事に治癒。でも寝込んでいた期間にほとんど食事がとれなかったことで体重は5Kg以上落ち、体力も落ちてしまい、復帰後もあまり調子よくなかったです。
イタリアは私立病院と公立病院があり、公立病院は基本無料だそう。
いろいろ処置をしてもらって薬も出してもらい、無料というのは驚きました。
早く行けばこんなに酷くならずにもっと登れたかなと思うので、我慢せずに病院に行った方が良いですね。

大変なことも多かったけど人は暖かく、目標のルートは登れたしで、終わってみれば楽しいツアーでした。